スタミナが欲しい (8/17/2001)

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バレエ・ダンサーとはなんて過酷な職業なんでしょう。
あんなに細いからだで高く跳んだり、
難しいステップを軽々と繰り出したり、
華麗な (だけど楽ではない) ポーズを決めたり。
「眠り」だったら 1 ステージが 3 時間もあるのよ。
「ドンキ」なんかほとんど踊りっぱなしじゃない。
瞬発力と持久力が両方ともなければとても務まりそうにない。
陸上の 100m とマラソンを両方こなしているようなものじゃない……
瞬発力なら気合で何とかなるけど持久力がどうも続かなくて……
という方はいませんか。
ちょっとスタミナが不足しているようです。

スタミナをつけるために皆さんはどんなことをしていますか。

スタミナ・ラーメンを食べる
走り込みをする
駅やビルでは階段を使う、などなど、

それぞれに効果はあるのでしょう。
でもスナタミナって何?

答えにつまった方のためにここでスタミナについて考えてみましょう。
スタミナとは持久力のことです。簡単ですね。
では何がスタミナを決めるのでしょう。
主な要因をあげると次のようになります。

  • 最大酸素摂取量
  • 運動の激しさ
  • 遅筋
  • 体型の歪み
  • ムダな動き

なんだか分かったような分からないような。
ではこれらについて見て行きましょう。

【最大酸素摂取量】
1 分間あたりにからだが摂取する酸素の量のことです。
運動すれば当然酸素が消費されますね。
ということは運動を続けるには十分な量の酸素を
次々と肺から取り込まなければなりません。
もし運動が激しすぎて取り込む酸素が足らなくなると息切れしてしまいます。
では逆に考えて、今よりも多くの酸素を取り込めるようになれば、
これまで息切れしていたような激しい運動にも耐えられるようになります。
「耐える」と書きましたが、そうなれば苦しかった運動も苦しくなくなるので、
「耐える」ではなく苦しまずに「こなせる」ようになるのです。

【ケース・スタディ:バテバテのレッスン】
これをレッスンにあてはめてみると、
今までセンターの後半で息が上がってバテバテになっていたとすると、
最大酸素摂取量がそのレッスンに対して不足していたことになります。
そこである種のトレーニング (あるいは細工 (別の話題で取り上げる予定)) をして
今までより最大酸素摂取量が増えたとすると、
同じレッスン内容なのにバテバテにならずに最後までこなせるようになるのです。
そうなると同じレッスンから得られるものも増えるでしょう。

【運動の激しさ】
ダンス (運動の 1 つ) をするためには、
あちこちの筋肉を次々と収縮させたり緩ませたりします。
筋肉は緩めるときはエネルギーを使いませんが、
収縮するときには使います。
どうやってそのエネルギーを取り出しているかというと、
体内の ATP という物質を分解して、
そのときに出てくるエネルギーをつかまえているのです。
この ATP は運動しているとどんどん消費されてしまうので、
なくならないように体内で次々と合成されています。
合成の原料は脂肪・蛋白質・糖質・グリコーゲンなどです。
どの原料を使うかは運動の激しさによって決まり、
次の 3 種類に分けられます。

【有酸素運動(エアロビック運動)】
1 つめはエアロビック・ダンスでおなじみの「エアロビック」。
これは有酸素という意味ですね。
文字どおり酸素があるという意味です。
有酸素運動なんて良く聞きますよね。
あの有酸素です (例えばこんな感じ)。

【無酸素運動(アネロビック運動)】
反対に無酸素運動というのもあります。
これが 2 つめです (例えばこんな感じ)。
3 つめは後述します。
アネロビック運動なんていうこともあります。
ところで何が有酸素で何が無酸素なのでしょうか。

【有酸素と無酸素の違い】
例えば、軽い運動では ATP 合成の原料として脂肪を使います。
脂肪を燃やすには酸素が必要です。
酸素を使うのでこれを有酸素運動といいます。
運動が激しくなってくると原料として脂肪の代りにグリコーゲンを使います。
グリコーゲンの分解には酸素を使いません。
酸素を使わないのでこれを無酸素運動といいます。
このとき疲労物質である乳酸が出てきます。
このように運動の激しさに応じて ATP を合成するしくみが異なるのです。

【バレエと有酸素運動】
バレエのレッスンでいえば、バーが有酸素運動的です。
運動中にしゃべれる程度の運動がこれに相当します。
レッスン中におしゃべりするなんて普通はないでしょうが、
目安としてはだいたいバー程度の激しさとお考え下さい。

【バレエと無酸素運動】
もしバーだけで息が上がってしまうとしたら、
みんなが有酸素運動をしているときに
最近レッスンを休みがちなのがたたって、
1 人だけこっそり無酸素状態になっちゃっているのかもしれません。
あるいは、そもそもバーのメニューがかなりきつく構成されているかのどちらかでしょう。
いずれにしてもおしゃべりをしたくてもできないほどきつい運動、
つまり無酸素運動になっているということです。

【バレエともう一つの無酸素運動】
3 つめの ATP の合成のしかたですが、
実はこれも無酸素運動のときに行われます。
先ほどの無酸素運動とどこが違うかというと、
これはしゃべるどころじゃなくて急激に思いっきり力を出すような運動状態をいいます。
グラン・ジュテで飛び上がる瞬間の「エィッ」
という筋肉の収縮などがこれに相当します (例えばこんな感じ)。

【スタミナと有酸素運動】
話をスタミナに戻します。
運動の激しさとしてスタミナに直接関係してくるのは、有酸素運動です。
有酸素運動ではエネルギー源として脂肪・糖質・蛋白質を使い、
ATP 合成の副産物としては二酸化炭素と水しか出てきまません。
脂肪などの原料は体内に十分あるので長時間運動を続けても不足することはないし、
酸素は呼吸により絶え間なく供給されるのでこれも不足することはないし、
疲労物質である乳酸は作られていないので蓄積しません。
要するに省エネルギーかつクリーンな運動状態ということです。
この有酸素状態を長く維持できるからだが、
まさにスタミナがあるからだだと言えます。
そこである種のトレーニングをして、
今までは無酸素運動になっていた激しいレッスンに対しても、
有酸素運動で対応できるようになれば、
同じレッスン内容なのにバテバテにならずに最後までこなせるようになるのです。

【スタミナの向こう】
そうなると、今までなかなかできなかった音の取り方や
空間のつかみ方などを意識できるようになり、
表現力に磨きをかける余裕が出てきます。

【遅筋と速筋】
関節を動かす骨格筋の線維は大きく 2 つに分けられます。
遅筋 (ちきん) 線維と速筋 (そっきん) 線維です。
遅筋は比較的ゆっくりな動きのときにはたらき、
速筋はスピードのある動きのときにはたらきます。
これを先ほどの話とあわせて言い換えると、
遅筋は有酸素運動のときに主にはたらき、
速筋は無酸素運動のときに主にはたらきます。

【遅筋が鍵】
なぜここで遅筋をスタミナの要因にしたかというと、
遅筋は有酸素運動のときに主にはたらく、
ということは、長時間燃料である脂肪を使うからです。
もうひとつ理由があります。
人間には「使えば使うほど発達する」という性質があります。
遅筋を鍛えることで全身の骨格筋に占める遅筋の割合を 9 割程度まで高めることができます。
そうなるとからだは有酸素的に動かしやすくなるということです。

【無理は無駄】
一方、きついレッスンをして無酸素運動をすると速筋が鍛えられてしまいます。
スタミナの観点からいうとこれはポイントがずれたトレーニングということになります。
スタミナが欲しい場合、遅筋を狙って有酸素運動を十分に行うことが効率的です。

【あー勘違い】
スタミナがないなら根性から鍛えないとだめだと思って過酷なレッスンをすると、
実は的外れな速筋を鍛えてしまうのです。
仮に速筋を鍛えたい場合でも先ず遅筋を十分に鍛えてからでないと、
あまり良い結果は得られません。
なぜなら速筋のトレーニングを優先すると遅筋よりも速筋のスイッチが入りやすくなってしまうし、
そもそも過酷な運動により疲労物質や活性酸素がたくさん出てきて体調が悪くなるからです。

【速筋の誘惑】
とはいえ、激しい練習を続けているとはじめはグングン成績は向上します。
ここで「やはり練習はきつい方が効果的だ」と誤解しがちです。
しかし、きつい練習を続けていくといつのまにか伸び悩んでくること(プラトー)があります。
そこで練習不足だと思ってもっときつい練習をしたらどうなるかというと、
ダウンしてしまうことがあります。
そんな経験はありませんか。
あるいは聞いたことはありませんか。
それは知らない間に遅筋より速筋のトレーニングを優先してしまった結果だと考えられます。

【健康的なトレーニング】
つまり遅筋を鍛えられる有酸素運動が実は効率的に運動能力を向上させる近道なのです。

【体型の歪み】
体型とは姿勢と似た言葉ですが、ちょっと違います。
体型とはその人が意識せず自然体のときに現している姿です。
姿勢とはその人が意識の有無にかかわらず現している姿です。
つまり体型は姿勢の一部に含まれます。

【ケース・スタディ:体型】
例えば上半身だけで考えてみましょう。
普段は猫背気味の A さんは、
レッスンが始まると背筋を真っ直ぐに伸ばします。
これは猫背体型の A さんが力を入れてバレエの基本姿勢を維持している状態です。
ここに B さんがいます。
B さんは自然体ですでにバレエの基本姿勢のような体型をしています。
A さんも B さんも体力的には大差がないとします。
レッスンが始まって 30 分が経ちました。
A さんはついつい猫背になってしまいます。
どうやら疲れてきた様子です。
B さんはまだ苦もなくバレエの基本姿勢を維持しています。

【からだの経済収支(姿勢)】
なぜ A さんは先に疲れたのでしょう。
本来の体型を筋肉の力で矯正して見かけ上のバレエの基本姿勢を維持していたからです。
つまり歪んだ体型を力で正していたので余計にエネルギーを消耗してしまったのです。

このように、体型を矯正して姿勢を美しく見せることはある程度可能ですが、
体型の歪みが大きいとエネルギーを余計に消耗してしまいます。
スタミナの観点からするとマイナスの要因になります。

【からだの経済収支(ムダな動き)】
これは文字どおり必要のない動きをしているとそれだけエネルギーを消耗するということです。
動きに現れなくても不要な力をいれていると、これもムダの原因になります。
例えば、お尻に力を入れたまま脚を動かそうとしても、滑らかにスッとは出ませんね。
お尻の筋肉は股関節を伸ばしたり外へ開いたりする筋肉ですから
それ以外の動きに対しては抵抗になります。

【ケース・スタディ:力み】
腕で実験してみましょう。
先ず肘掛けのない椅子に座って右腕を下に伸ばします。
腕の力を抜いた状態からサッと肘を曲げて拳を肩の前まで持ってきてみてください。
同じ動作を数回繰り返して感触を確認します。
次に最初と同様に肘を下に伸ばした状態にし、
今度は肘が曲がらないように力むと同時に、
それ以上伸びないようにも力みます。
つまり肘をギンギンに硬直した状態にします。
すかさずサッと肘を曲げて拳を先ほどと同様の位置まで持ってきてみてください。
この曲げはじめの瞬間、に一瞬躊躇するような間がありませんでしたか。
また肘が曲がって行く最中も
屈筋 (上腕二頭筋。力こぶの筋肉) に抵抗や違和感を感じませんでしたか。
伸筋 (上腕三頭筋。二の腕プルンプルンの所) にも抵抗を感じませんでしたか。
何回か試してみてください。

このように動かし始める前から関節周囲の筋肉を緊張させていると、
滑らかな動きが得られません。
動きの妨げになるし、そもそも必要ない緊張なのですから、
スタミナの観点からするとこれもマイナスの要因になります。

【まとめ】
以上、スタミナに関係する要因についていくつか説明しましたが、
参考になりましたでしょうか。
全部を一度に改善することは難しいと思いますし、
人によってすでにクリアしているものもあったと思います。
出来るところから少しずつしかし着実に改善していけば、
必ず良い結果が得られると思います。
少なくともその方向が示せていたら幸いです。

参考文献
『In Fitness and in Health, Everyone is an Athlete』
Dr.Philip Maffetone、David Barmore Productions、1994。
『シンプル生理学』貴邑冨久子・根木英雄、南江堂。
『健康運動実践指導者用テキスト』健康・体力づくり事業財団。

ダンサーのからだ

  • 2016 08.21
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