屈筋と伸筋のバランス (11/11/2000)

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【屈筋と伸筋】
関節を動かす筋肉、つまり骨格筋は解剖学的には屈筋と伸筋に分けることができます。関節を曲げるときに力が入る筋肉が屈筋で、関節を伸ばすときに力が入る筋肉が伸筋です。肘の曲げ伸ばしを例にとると、肘を曲げるときは力こぶになる筋肉(上腕二頭筋)に力が入りますからこの筋肉は屈筋です。反対に、肘を伸ばすときには二の腕プルンプルンの筋肉(上腕三頭筋)に力が入りますからこの筋肉は伸筋です。胴体では、体を前屈するときは腹筋に力が入りますから腹筋は屈筋です。反対に、体を後ろに反らすときは背筋に力が入りますから背筋は伸筋です。

【屈筋の協調/伸筋の協調】
肘を曲げて胴体を曲げて股関節を曲げて膝を曲げて頚を曲げてと、つまりしゃがんで丸くなるように体を小さくする動きは全身の屈筋の収縮によって得られます。反対に、頚を伸ばして背中を伸ばして股関節を伸ばして膝を伸ばして肘を伸ばしてと、つまり立ち上がって手足を大きく伸ばす動きは全身の伸筋の収縮によって得られます。

このような全身の動きと屈筋・伸筋の関係から分かることは、屈筋は屈筋どうし、伸筋は伸筋どうしが協調しているということです。もし頚と胴体を曲げて股関節と膝を伸ばしたら、意識してバランスを調節しないと前に倒れてしまいますね。反対に、頚と胴体を伸ばして股関節と膝を曲げたら、やはり意識してバランスを調節しないとその姿勢は保てませんね。

これは先ほどの屈筋どうしあるいは伸筋どうしの協調関係を崩しているから、意識しないとバランスが保てないのです。

【屈筋は動作/伸筋は姿勢】
バレエと結び付けて考えると伸筋は姿勢を屈筋は動きをコントロールしています。姿勢が良いとは、全身の関節を上手く伸ばせている状態をいいます。猫背になったり、頚が前に出たり、腰が曲がったり、膝や肘が伸びきらなかったりと、これらのうちの一つでも該当すると良い姿勢には見えませんね。つまり関節が伸ばせないと姿勢は良く見えないのです。

関節を伸ばす筋肉は伸筋ですから、伸筋は姿勢をコントロールしているといえます。クロアーゼやエファッセなどのポジション、アラベスクなどのポーズについても同様に伸筋が重要です。伸ばすべき関節が伸びていないと美しく決まりません。

姿勢が決まったとして、そこから手足を動かす動作の多くは関節の屈曲によって得られます。伸びている関節をさらに伸ばす動きはそう多くありませんよね。バレエではあまり使いませんが、モダンなどで多用するコントラクションは屈筋の素早い収縮によって得られます。

素早い動作の多くはどの関節であれ関節を曲げる動作です。例えば、熱いやかんに手が触れると素早く手が引っ込みますよね。それと同じスピードで手を伸ばすことができますか。普通はできないと思います。屈筋が素早く収縮できるのは危険から身を守るための生理特性なのです。だから「素早い動作」というのは屈筋の得意とするところなのです。

一方、伸筋はからだが折れ曲がらないように重力に逆らって関節を伸ばすのが得意です。スピードがない代りにスタミナに長けています。だからポーズを見せるときは動作が比較的ゆっくりか停止することになります。つまり、伸筋が姿勢を、屈筋が動作をコントロールしているのです。(ですからフロア・バーは伸筋を休ませた状態で、手足を屈曲させて動かすのでバレエの「動作」に必要な筋肉、つまり屈筋の使い方をからだに覚えさせる上でとても有効です。)

【屈筋と伸筋のバランスが大切】
ですから、ダンサーにとって望ましい筋肉の状態とは屈筋と伸筋のバランスが取れている状態です。

一方、スポーツの世界は別です。重量挙げの選手なら重たいバーベルを頭上高く持ち上げる力が必要です。言い換えると関節を伸ばす筋肉である伸筋が全身的に発達していることが望ましいです。ボートの選手なら腕を曲げ体を後ろに引き足を踏ん張る力が必要です。言い換えると上肢の屈筋、背筋(伸筋)、下肢の伸筋が発達していることが望ましいです。水泳の自由形の選手なら上肢を前回しにする力が必要です。言い換えると肩関節の屈筋が発達していることが望ましいです。

ところがバレエでは全身でポーズを決め全身の関節を屈伸するので屈筋だけでもなく伸筋だけでもなく、両方が全身でバランス良く発達していることが望ましいのです。大腿の前側・外側、お尻、背中などの筋肉は関節を伸ばすための筋肉ですから伸筋です。レッスン後にこれらの部位が筋肉痛になったら、伸筋の使い過ぎか力不足です。

大腿の内側・後側、お腹などの筋肉は関節を曲げるための筋肉ですから屈筋です。レッスン後にこれらの部位が筋肉痛になったら、屈筋の使い過ぎか力不足です。

これらを指標にして、レッスン内容、体の使い方のくせ、筋肉の過不足を評価することもできます。

【屈筋と伸筋のバランスをとる】
筋力トレーニングはここでは扱わないことにして、すでにある屈筋と伸筋のバランスをとる方法をご紹介します。これは筋力トレーニングではありませんのでもりもりと筋肉が発達することはありません。筋力不足の解消にはなりませんので、その点誤解なさらないようご注意ください。

「バランスをとる」というからにはバランスが乱れているからだを対象としています。バランスが乱れているとはどういう状態かというと、どこかの伸筋が緊張気味であったり、どこかの屈筋が緩んでいて力が入らないような状態をいいます。またはその逆もあります。もしそういうアンバランスがあるようでしたらレッスン前にちょっと調整する意味で行ってみてください。

【伸筋は伸筋に/屈筋は屈筋に】
実際にからだを動かす前に、予備知識としてひとつ確認しておきたいことがあります。それは「伸筋は伸筋に、屈筋は屈筋に」作用する傾向があるということです。例えば、先ほどのように立った状態からしゃがみこんでからだを丸めたとします。この動作では、からだ中の関節が曲って行くのですから屈筋が縮み伸筋が伸ばされます。

逆に、しゃがんだ状態から立ち上がって胸を張り手足を大きく伸ばしたとします。この動作では、からだ中の関節が伸びて行くのですから伸筋が縮み屈筋が伸ばされます。

この性質と静的ストレッチを組み合わせると、次のような屈筋と伸筋のバランスをとるエクササイズが出来上がります。

【屈筋と伸筋のバランス・エクササイズ(全身ストレッチ)
これを行う際は効果の有無が分かるように、《観察》《調整》《確認》をセットにして行うことをお勧めします。なお単純化のため、ここでは筋肉の影響にのみ注目し、関節部の骨の形状や位置の影響などは考慮しません。

《観察》
まずは観察です。緊張している筋肉は伸びにくいので、その筋肉を伸ばす方向に関節を動かそうとすると抵抗を感じます。つまり、その動作がし難くなるのです。ですから、背中(伸筋)が緊張すればからだは前屈しにくくなり、お腹(屈筋)が緊張すればからだは後屈しにくくなります。つまり、屈筋と伸筋がアンバランスになると前屈か後屈(前後動作)のどちらかがしにくくなる傾向があるのです。

そこでこの前後動作のアンバランスがないか観察します。立位での観察法と座位での観察法を紹介しますが、状況に応じてどちらか一方のみ行って頂ければ結構です。

立位での観察
・両足の爪先と踵をそろえて立ちます。6番ポジションのことです。
・ゆっくりとからだを前へ曲げます。普通の前屈です。ストレッチのように引き伸ばそうとしないで自然に止まるところまでで結構です。
・次にゆっくりと後ろへ曲げます。 手は腰に当てても当てなくてもどちらでも構いません。
・曲げやすさや曲げきったときのお腹・腰・背中の突っ張り感を調べます。

座位での観察
・正座します。
・ゆっくりと頭を前に倒します。
・次にゆっくりと後ろへ倒します。
・曲げやすさや曲げきったときのお腹・頚・背中の突っ張り感を調べます。

前に曲げたとき背中などに突っ張り感がある(前屈しにくい)ようでしたら背中(伸筋)が緊張気味であると判断します。後ろに曲げたときお腹などに突っ張り感がある(後屈しにくい)ようでしたらお腹(屈筋)が緊張気味であると判断します。

《調整》
1.仰向けに寝ます。
2.両手の指を組み合わせて頭上に伸ばし、
手の甲が頭の方に向くように手のひらを返します。
3.ゆっくりと大きく息を吸いながら、手のひらを頭上に押し上げると同時に、
踵を突き出してつま先を膝の方に引きアキレス腱を伸ばします。
手も足もめいっぱい伸ばします。
背中が浮かないように、手も床から離れないように注意します。
4.息を吸いきって耐えられなくなったら一気に息を吐き全身脱力して、
そのまま3呼吸ほど休みます。
5.次に、再び両手の指を組み合わせて頭上に伸ばし、
今度は手のひらが頭の方に向くようにします。
アン・オーから指を組み合わせたような形です。
6.ゆっくりと大きく息を吸いながら、手の甲を頭上に押し上げると同時に、
踵を引いてつま先を下へ伸ばし脛の前側を伸ばします。
手も足もめいっぱい伸ばします。
背中が浮かないように、手も床から離れないように注意します。
7.息を吸いきって耐えられなくなったら一気に息を吐き全身脱力して、
そのまま3呼吸ほど休みます。
8.上記2~7を1セットとして3セットほど繰り返します。

※3のときに全身の「?筋」が引き伸ばされ、6のときに全身の「?筋」が引き伸ばされるのを実感するとより効果的です。この「?」には「屈」または「伸」が入ります。これに答えられるかどうかは上達のコツで書いた入力系の感覚に関係していますので、試しに皆さんご自身で実感して(からだの声を聴いて)みて下さい。

《確認》
効き目があったかどうか確認しましょう。
観察と同じ動作をもう一度してみます。
先ほど感じられた突っ張り感や動かしにくさが解消していたら成功です。
これで屈筋と伸筋のバランスが取れたことになります。

【まとめ】
屈筋と伸筋のバランスがよくなると動作全般が楽になることが多いので、レッスン前に下準備としてバランスをとっておくと何かと良いのではないでしょうか。

ダンサーのからだ

  • 2016 08.21
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